Klaviyoとは?
Shopify Messagingとの違いと、
CRMツールの選び方
メール配信はShopifyの標準機能で足りている。そう思いながら運用を続けている方は多いと思います。実際、月に数回のお知らせを送るだけなら、標準機能で困る場面はそれほどありません。
ただ、Shopify関連の情報を追っていると「Klaviyo(クラビヨ)」という名前を目にする機会があるはずです。何かすごいらしい、でも英語だし、今のままでも回っている。そうやって判断を先送りにしたまま、気づけば半年経っていた、という状態になっていないでしょうか。
この2つは、どちらが優れているかを競っているツールではありません。そもそも役割が違います。そして見落とされがちなのですが、ShopifyはKlaviyoに1億ドルを出資し、Shopify Plusの推奨メールプロバイダとして位置づけています。自社にもメール機能を持ちながら、です。
判断を先送りにすることには、ひとつだけ確実なコストがあります。お客様の行動データは、貯め始めた日からしか貯まりません。「誰がどの商品を見て、いつ買って、どのメールに反応したか」という履歴は、あとから過去に遡って作ることができないためです。
この記事では、Klaviyoがそもそも何のためのツールなのかという前提から整理し、Shopify Messagingとの役割の違い、ShopifyがKlaviyoに力を入れている背景、そして日本のストアが検討前に知っておきたい注意点をお伝えします。
1. Klaviyoとは何のためのツールなのか
Klaviyoは「Shopify向けのメール配信ツール」と紹介されることが多いのですが、この説明だと本質が伝わりません。Klaviyo自身は、自社のことを「B2C CRM」と呼んでいます。消費者向けの顧客管理基盤、という意味です。
メール配信ツールとCRMは、目的が違います。メール配信ツールの目的は「送ること」です。宛先リストがあって、内容を作って、送信する。送り終わったら一区切りです。
一方CRMの目的は「覚えること」です。どのお客様がどの商品ページを見たか、何をカートに入れて離脱したか、いつ買ってその後どうなったか。そうした行動を一人ひとりのカルテとして蓄積し、次の接点に使う。メールはあくまで、その蓄積を活かすための出口のひとつという位置づけです。
この違いは、実際の運用で分かれ目になります。たとえば「3か月前に買ってくれたけれど、その後動きのないお客様」に声をかけたいとき。行動が蓄積されていなければ、そもそもその条件で絞り込むことができません。送る道具は持っていても、送る相手を見つけられない、という状態になります。
2. Shopify Messagingとは(旧・Shopifyメール)
先に名前の話をさせてください。ここで混乱される方が本当に多いためです。
Shopify Messagingは、以前「Shopifyメール(Shopify Email)」と呼ばれていたものです。メールだけでなくSMSも扱うようになったことから、名称が変わりました。中身が別物になったわけではありません。
検索して出てくる日本語の解説記事は、まだ旧名で書かれたものが多く残っています。「Shopifyメール」と「Shopify Messaging」を別のアプリだと思って探し続けてしまう、という時間の無駄が起きやすい部分です。
できることを整理すると、次のようになります。Shopify管理画面の中から直接使えて、アプリを別途入れる必要はありません。月1万通までは無料で、それを超えると1,000通ごとに1ドルの従量課金です(2026年8月時点)。ドラッグ&ドロップでメールを組み立てられて、商品情報をそのまま差し込めます。カゴ落ちのリマインドのような基本的な自動配信も用意されています。
最近はAIアシスタントのSidekickが使えるようになったことで、使い勝手が上がっています。「1回だけ購入したお客様」「30日以内に2回以上購入したお客様」といったセグメントを、条件を話しかけるだけで作れるようになりました。この手軽さは、標準機能の強みだと感じています。
3. 「送る道具」と「覚える基盤」という違い
両者を並べると、違いが見えやすくなります。
| 比較項目 | Shopify Messaging | Klaviyo |
|---|---|---|
| 位置づけ | 配信ツール(送る道具) | B2C CRM(覚える基盤) |
| 料金の考え方 | 月1万通まで無料、超過分は1,000通で1ドル | 連絡先の数に応じて上がる(無料枠は小さめ) |
| 導入 | 管理画面に最初から入っている | 外部サービスを連携して使う |
| 自動配信 | カゴ落ちなど基本的なもの | 購入後フォロー、誕生日、休眠復帰などを多段階で組める |
| お客様の絞り込み | Sidekickに話しかけて作れる | 行動履歴を積み上げて細かく設計できる |
| 扱えるデータ | Shopifyが持っている範囲 | 他ツールのデータも集約できる |
| 日本語対応 | 管理画面もサポートも日本語 | 管理画面・サポートは英語のみ |
表にすると差が多く見えますが、突き詰めると違いは一点です。お客様一人ひとりの行動を、どこまで覚えておけるか。それ以外の項目は、この一点から派生しているにすぎません。
細かく絞り込めるのも、多段階の自動配信を組めるのも、覚えている情報が多いからです。逆に言えば、覚える必要がない運用なら、その機能は使われないまま費用だけがかかります。
4. なぜShopifyはKlaviyoに力を入れているのか
ここは知らない方が多い部分だと思います。自社にメール機能があるShopifyが、なぜ他社ツールを推すのか、という話です。
2022年、1億ドルの出資
ShopifyはKlaviyoに1億ドルを出資しています。単なる業務提携ではなく、資本を入れているという点が重要です。同時にKlaviyoはShopify Plusの推奨メールプロバイダという立場を得て、さらにShopifyの新機能に早期アクセスできる権利も得ました。これは他のツールにはない扱いです。
2026年、統合はさらに進んだ
2026年3月には、両社が連携をさらに深めることを発表しています。Shopify Marketsの多言語・多通貨カタログのデータを、Klaviyo側がそのまま扱えるようになりました。国ごとに商品や価格が違う越境ECで、顧客データと商品情報を破綻なく結びつけられる、という話です。現在この組み合わせを使っているブランドは11万を超えるとされています。
背景にあるShopifyの考え方
この動きには一貫した思想があります。コマースの土台は自社で作る。その上に載る専門領域は、その分野で最も強いパートナーに任せる。決済や配送でも同じ形を取っています。
CRMを自社だけで世界最高水準にするには何年もかかります。それよりも、すでに強いKlaviyoと深く結びついたほうが、Shopifyを使う店舗全体の成果が早く上がる。そういう判断だと考えると、筋が通ります。
実際、Shopifyは公式ブログでKlaviyoの解説記事を出しています。自社にもメール配信機能を持っている企業が、他社ツールの使い方を自ら案内している。この一点だけでも、扱いの特別さが伝わってくるのではないでしょうか。
つまり両者は競合ではなく、階段の上下のような関係です。Shopify Messagingは全店舗が最低限使える入り口として置かれ、本格的に顧客データを活かしたい店舗はKlaviyoへ進む。そういう設計になっています。
5. どちらを選ぶべきか
ここまで読んで「では自分の店はどちらなのか」と思われたかもしれません。判断材料になりそうな点を整理します。
選び方のポイント
- 月の配信通数が1万通に届かないなら、Shopify Messagingの無料枠で足りる場合が多い
- 運用する方が英語に不安を感じるなら、まずShopify Messagingから始めるほうが続く
- お客様の状態ごとに内容を出し分けたい、という要望が出てきたらKlaviyoの検討時期
- 購入後のフォローを何段階も組みたい場合は、Klaviyoのほうが設計しやすい
- 越境ECで複数の市場を扱うなら、Shopify Marketsとの統合が効いてくる
- ツールを増やすより先に、そもそも配信する相手を集められているかを確認する
最後の項目は、実際のご相談でよく出てくる話です。高機能なツールを入れても、メールアドレスを預けてくださるお客様が増える導線がなければ、送る相手がいません。登録フォームの位置、購入後の案内、会員登録の動機づけ。そちらが先という店舗は少なくありません。
どちらを選ぶかは、扱っている商材や購入サイクル、社内で誰が運用するかによって変わります。単価が高くて購入間隔が長い商材と、消耗品で繰り返し買われる商材とでは、そもそも必要な仕組みが違うためです。
6. 日本のストアが知っておきたいこと
Klaviyoを検討する際、日本のストアにとって避けて通れない点があります。
注意:管理画面は日本語になりません
Klaviyoの管理画面・設定画面・レポートは英語のみで、日本語表示に切り替えることはできません。サポートへの問い合わせも英語です。一方で、お客様に届くメールの本文や登録フォームは日本語で作成できます。届くものは日本語、操作する側は英語、という切り分けになります。
これは想像以上に運用を左右します。設定を触るのが特定の担当者に限られてしまい、その方が不在のときに何も動かせない、という状況が起きやすいためです。誰が運用するのかを決めてから導入したほうが安全です。
もうひとつ、日本ならではの論点としてLINEとの関係があります。国内では、メールよりLINEのほうが開封される、というストアも珍しくありません。現時点でKlaviyoとLINEは直接つながらないため、両方を使う場合はそれぞれ別の仕組みとして運用することになります。お客様のどの場面でメールを使い、どの場面でLINEを使うのかという整理が、ツール選び以上に効いてくる部分です。
「自分のストアはどちらを使うべきか判断がつかない」「英語のツールを入れて運用が回るか不安」という場合は、現状の整理からサポートします。
7. よくある質問(FAQ)
Q1: Shopify MessagingとKlaviyoは併用できますか?
A: 技術的には併用できますが、あまりおすすめしません。同じお客様に両方から配信してしまう事故が起きやすく、どちらの施策が成果につながったのかも分からなくなります。どちらかに寄せて、配信の窓口を一本化したほうが運用は安定します。
Q2: Klaviyoは日本語で使えますか?
A: お客様に届くメールやフォームは日本語で作成できます。ただし管理画面・設定・レポートは英語のみで、日本語表示に切り替えることはできません。サポートも英語対応です。運用する側に英語を読む場面が発生する、という前提で検討してください。
Q3: 「Shopifyメール」という名前を見かけますが、Shopify Messagingと同じものですか?
A: 同じものです。メールに加えてSMSも扱うようになったことから、Shopify Messagingという名称に変わりました。検索して出てくる解説記事は旧名で書かれたものが多く残っているため、別のアプリだと勘違いしやすい部分です。
Q4: 今はShopify Messagingを使っています。あとからKlaviyoに移行できますか?
A: 移行は可能です。ただし、Shopifyに残っている注文履歴や顧客情報は引き継げても、メールの開封やクリックといった配信の反応履歴は、Klaviyoで配信を始めた日からしか蓄積されません。顧客理解の材料は過去に遡って作れない、という点は移行時期を考えるうえで押さえておきたいところです。
Q5: 小規模なストアでもKlaviyoを使う意味はありますか?
A: 配信通数だけで見ると、月1万通に満たないストアはShopify Messagingの無料枠で足ります。判断が変わるのは、お客様の行動を細かく分けて出し分けたい場合や、購入後のフォローを何段階も組みたい場合です。今の配信で物足りなさを感じているかどうかが、ひとつの目安になります。
8. まとめ
Shopify MessagingとKlaviyoは、どちらが上かという関係ではありません。送ることに最適化された道具と、覚えることに最適化された基盤。目的が違うものを並べて比べようとすると、判断を誤ります。
この記事のポイント
- Klaviyoはメール配信ツールではなく、顧客の行動を蓄積するCRMという位置づけ
- Shopify Messagingは旧「Shopifyメール」。名称が変わっただけで別物ではない
- Shopify Messagingは月1万通まで無料。管理画面もサポートも日本語
- ShopifyはKlaviyoに1億ドルを出資し、2026年3月には統合をさらに深めている
- Klaviyoの管理画面は英語のみ。誰が運用するかを決めてから導入する
- お客様の行動データは、貯め始めた日からしか貯まらない
私自身、Shopifyストアの運用支援の現場で、メールとLINEの使い分けについてご相談をいただく機会が増えています。ツールを何にするかより先に、お客様とどの場面で接点を持つのかという設計のほうが成果を左右する、というのが率直な実感です。
CRMツールの選定についてお悩みはありませんか?
この記事で、Shopify MessagingとKlaviyoの役割の違いについてはご理解いただけたかと思います。
しかし、「うちの商材だとどちらが合うのか」「英語のツールを入れて運用が回るのか」「そもそも配信する前にやることがあるのではないか」といった疑問も残っているかもしれません。
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